ぜひ一度聴いてほしいビリーシーンのインスト曲
今回は、僕がオススメするビリー・シーンのインストゥルメンタル(以下、インストと略)の楽曲を、ひとつご紹介します。
はじめに
自身のソロアルバムや、ジョン・ノヴェロ、デニス・チェンバースと組んでいるNiacin(ナイアシン)のアルバムを探せば、インスト曲は山ほど聴けますし、その中にもオススメがあるわけです……が!
ぜひとも聴いていただきたいのが、こちら『ファランドール』です。
https://www.youtube.com/watch?v=U2GOTTuseX8
クラシックの名曲を絶妙にカバー
お聴きいただければわかると思いますが、この『ファランドール』は、クラシックの名曲、ビゼー作曲の『アルルの女』のテーマをモチーフにして、インスト曲に仕上げたものです。
原曲は、過去記事でご紹介したTALASのライブ盤『Live Speed On Ice』に収録されていたもので、2枚組の復刻アルバム『Billy Sheehan Talas Years』でも聴けます。
1980年代は、クラシック曲をモチーフにしたカバー曲が多く発表されていました。
かのイングヴェイ・マルムスティーンらによる『ネオ・クラシカル』なギターをメインにしたものが多いなか、この後期TALASの『ファランドール』は、ちょっと異色です。
わかりやすいストレートなハードロック全開なんですよね(笑)。
でも、原曲のテイストをうまく残しながらも、全編通して、ベースとギターのスピード感あふれるツイン・リードが堪能できるという点で、個人的には画期的なアレンジだと思うのですが、いかがでしょうか。
特に、イントロのメインテーマのふた回り目で、ユニゾンしていたギターとベースが少しずれたラインを弾くところ。
後半、ギターがテーマのメロディを弾いている背後からビリーのベースがとんでもない大がかりなフィルインを入れたりするところ。
挙げればキリがないのですが……。
とにかく「これはスゴい!」と思った曲です。
当時、コピーしようとして挫折して、それ以来、ほったらかしています(笑)。
後期TALASがまさかの!?
このライブ盤のときは、トリオ編成だったオリジナルTALASから、ビリー以外が全員メンバーチェンジして、
- ボーカル:フィル・ナーロ
- ギター:ミッチ・ペリー
- ベース:ビリー・シーン
- ドラム:マーク・ミラー
という4人体制のハンド編成になっています。
僕はこれを「後期TALAS」と呼んでいるのですが、ビリーは「TALAS(ver.2)」と書いたりしていますね。
その後期TALASなんですが、実は、2017年7月19日に、ニューヨーク州ロチェスターというところでおこなわれた野外イベントで「一夜限りの再結成ライブ」をしています。
再結成のキッカケは、ドラマーのマーク・ミラーがThe Winery Dogsのバックステージを家族で訪問したことだったとか。ビリーとは30年以上ぶりの再会だったそうです。
オリジナルTALASは、時折、再結成ライブをしていますが、後期TALASは「ビリー脱退後、初めて」だったそうですから、その貴重さがお分かりいただけるでしょうか(笑)。
で、そのときにやってくれたんです!
恥ずかしながら、これをみたとき、感動しすぎて涙してしまいました。
まさか、ビリーが、後期TALASのメンバーと、あの『ファランドール』をプレイしている姿を、鮮明な動画で観られるとは……。
本当に良い時代になりましたね。
厳密にいうと、ギターはミッチ・ペリーではなく、サポートの方なんですが、それでも『Live Speed On Ice』の音源にかなり忠実にプレイされていて、当時を思い出させる素晴らしいステージだなと思いました。
余談ですが、他の動画では、ボーカル、フィル・ナーロの歌声も聴けるのですが、当時と全く変わっていなくて驚きました。やはり実力のあるバンドは、いつまでたっても色あせませんね。
盟友トニー・マカパインとも
TALAS以外の動画もご紹介します。
こちら、盟友トニー・マカパインとの『ファランドール』です。
ビリーは一切映らないんですが(笑)。
演奏中に時折見せるトニーの笑顔が、とてもすてきです。
1986年にリリースされたトニーのデビューアルバム『Edge Of Insanity』(これも超オススメ)にビリーが参加して以来、2人は大親友だそうです。
前述の動画は、この2人とマイク・ポートノイ、デレク・シェリニアンが組んだPSMSというグループでのプレイでした。
少し話がそれますが、ドッグキャンプで、ビリーがわたしがいる夕食のテーブルに来てくれたことがあります。
そのとき、こんなことを話してくれました。
「トニー・マカパインを知ってる?彼は絶対音感をもっているんだ。でも、譜面は読めない。僕も読めない。エディ・ヴァン・ヘイレンも、デニス・チェンバースもそう。僕らは、お互いの音を耳で聴いて、一緒にプレイしているんだよ。大事なのは耳なんだ」
動画のトニーの表情を見ていると、聞こえる音を通して、お互いにリアルタイムでコミュニケーションしている感じが伝わってくる気がします。
ビリーも映っていたら、きっと笑顔でトニーの動きを観察していたことでしょう。
音楽は「音を楽しむ」と書きますが、彼らはまさしくそれをやっているんだなと思います。
あのマイク・ポートノイにも影響
Dream Theater、The Winery Dogsなど、泣く子も黙るスーパー技巧派ドラマーで知られるマイク・ポートノイですが、その彼がインタビューで「後期TALASのドラマー、マーク・ミラーのプレイに影響を受けた」と語っています。
僕は、どうしてもビリーに偏って見てしまう傾向がありますが、一般的にも、やはりTALASってすごいバンドなんだなあ……と再認識しました。
PSMSで『ファランドール』をカバーしたのも、実はマイクの提案だったりして?
『Shy Boy』をカバーするときも、すっごく楽しそうなんですよね。
ということで、今回は『ファランドール』から、後期TALAS関連について書いてみました。
参考になればうれしいです。
ライタープロフィール
ビリーシーンスタイル・ベーシスト
ぢゃっく
1973年生まれ。
広島県出身。
16歳からベースを始める。
直後にみたビリーシーンのビデオに衝撃を受けて以来、25年以上に渡って、彼のプレイスタイルを研究中。
神戸市西区にあるスタジオメロウのスタッフ、Mellow Music Schoolのベース講師も務める。
「ぢゃっく」は、学生時代、ベースのジャックノイズが酷かったことからついたニックネーム。
テスコムスタジオメロウ|神戸市西区の音楽スタジオ:
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